名古屋市で1988年に発生した妊婦切り裂き事件が、いまだに解決を見ないまま時を経ています。この衝撃的な事件は、愛知県中川区の住宅街で、妊娠中の27歳の女性が命を奪われたものです。事件当日、彼女は友人とお茶を楽しんでいる最中に、見知らぬ男に襲われました。友人が帰った後、彼女の玄関は施錠されておらず、犯人は侵入することができました。

午後6時50分、夫が帰宅すると、信じられない光景が広がっていました。妻は床に横たわり、彼女の足元には生まれたばかりの赤ちゃんが泣いていました。母親はすでに亡くなっており、司法解剖の結果、窒息死と判定されました。赤ちゃんは奇跡的に生き延び、無事に救出されましたが、事件の背後には異常な心理が潜んでいました。

犯人は被害者の体内に電話の受話器とミッキーマウスのキーホルダーを押し込むという、理解しがたい行動に及びました。愛知県警は40,000人以上の捜査員を動員し、捜査を行いましたが、犯人の特定には至らず、2003年に時効を迎えました。目撃証言や不審者の情報はあったものの、決定的な手がかりは見つかりませんでした。

この事件は、未解決のまま残された多くの謎と共に、社会に深い影響を与えました。特に妊婦や女性の防犯意識が高まり、さらなる犯罪防止策が求められるようになったのです。現在も捜査資料は保管されており、新たな証拠や情報があれば再調査の可能性がありますが、犯人の特定は依然として難しい状況です。この痛ましい事件は、忘れられることのない、日本の犯罪史に刻まれた悲劇です。